遠くを見ていた ~宵々山の夜~
妖の灯りか 提灯に 誘われるままの 宵の山
「ゴロゴロ ピカ! ドンー」
カミナリが鳴り響き、京の都に本格的な夏を告げる。
2017年の前祭り巡行も無事に終わり、京都特有の蒸し暑い季節が始まります。
宵山には32万人の人出。熱気がムンムンと立ち込めるなか、幻想的な雰囲気をかもし出す鉾や山の提灯の灯り。多くの人たちがその幻想的な輝きに酔いしれながら祇園まつりは17日の巡行へとつづいていく。
神の使いと化したお稚児さんが、人間と神の世界との結界を示すしめ縄を「えい」と断ち切り、長刀鉾を先頭に鉾9基と山14基がゆっくりと動き出す。
辻々に構える多くの人を魅了するかの「辻回し」、10トン近くある鉾に若竹を敷き詰め車輪を滑らせる伝統の技「エイヤー」の掛け声でくるりと90度に見ごと回る長刀鉾。
北に進路を変え威風堂々と進んでいき、それに続く鉾や山に多くの歓声や拍手が浴びせられるのです。
つづく、24日の後祭りにも多くの観光客のみなさんが「京都の粋」を楽しむはずです。
気温35度近くのなか、2017年の祇園祭りの前祭りは幕を閉じました。
わたくしは宵々山へとひとり繰りだし、ビール片手に祇園祭の風情を楽しんでまいりました。
楽しそうに歩く人たち、豪華絢爛の鉾を見入る人波、前に進むのもままならないほどの人たちで盛り上がる宵々山の夜。
ビールを飲みながらのそぞろ歩き、行きかう女性の浴衣の襟から香る色香に酔いが心地よく全身にいきわたる。
いいなー! これが京都の夏の風景。
居並ぶ露店、トウモロコシやたこ焼きの香ばしい香りがビールの速度を上げていく。
「コンチキチン」の祇園ばやしに誘われるまま、夜更けまでさ迷い歩くわたし。
ふと、若かりし日の祇園まつりを思い出す。
仲の良いヤンチャくれとつるんで遊びまわった宵山の夜、酒と女と祇園ばやし。
からかいながらも仲良くなった彼女たちは今、どうしているのだろ?
目が合った、合わないで喧嘩した祭りの夜もあったな~警察から必死で逃げ回った面白おかしい夜だった。
知らぬ者同士がいつしか仲良く円を組み、酒を酌み交わす。
あれやこれや語り合い、楽しい時をきざんだことも懐かしい。
そんな光景が目の前で重なり、あの頃に戻れたら?
ふと、そんな思いがした宵々山の夜でした。
ふざけ合った友も、一人死に二人死に気づけばひとり取り残された自分。
そんな自分が病に冒され、今年が最後の見納めかと心のなかで思っている。
「来年の祇園祭は見れるのだろうか?」
楽しかった日々はあっとゆう間に過ぎ去っていく。
周りを見渡せば、いるいるヤンチャくれの若者たちが、遊べよ、彼女を見つけろよ、若者たち。
そう思いながら一歩と踏み出し振り返ると提灯の灯りの向こうに若かりし日の自分の姿があった。
そんな「遠くを見ながら」残りのビールをグイっと飲み干す。
気づけば夜明け、久しぶりに朝まで飲み明かした祇園まつりでした。
ごく普通のサラリーマン。
あなたにも訪れるかもしれない? ガンと言う病。
順調に出世街道を歩んでいた男に医師はこう告げた。
「余命半年、やり残したこと会いたい人がいれば今のうちに」と
それでは次回投稿まで oto9